アデノウイルス感染症
アデノウイルス感染症はアデノウイルスに感染することで引き起こされる感染症で、呼吸器、眼、消化器などにさまざまな症状を引き起こします。
アデノウイルスの種類は多く、49種類も存在するため、どのアデノウイルスの型に感染するかで臨床症状が異なり、アデノウイルスの型によっては感染しても症状が出ない場合もあります。また、ウイルスの種類が多いために、免疫ができにくいために何度も感染してしまいます。
病名 |
ウイルス型 |
肺炎 | 3、7、21型 |
咽頭結膜熱 | 3、4型 |
流行性角結膜炎 | 3、7、8、19、37型 |
胃腸炎 | 40、41型 |
出血性膀胱炎 | 11型 |
アデノウイルスは夏風邪の原因でよく知られているウイルスで、乳児や小児に比較的多く感染がみられ、成人にも感染します。夏風邪の原因ウイルスとされていますが、実際は年間を通じて検出されるウイルスです。
感染経路はくしゃみ・せきから唾液が飛び、それを吸い込むことでうつる飛沫感染やプールなど水を介してうつったり、涙、鼻水などがついたところを触ることでうつったりする接触感染します。
アデノウイルス感染症の1つに咽頭結膜熱(プール熱)があります。プール熱は小児を中心に夏に多発し、7~8月に最も流行します。プール熱は夏場にプールを介してうつるためプール熱と呼ばれていますが、プールで感染するとは限らず、くしゃみでも感染しますし、感染者が使用した食器やタオルを共用することでも感染します。
症状は4~5日間の潜伏期間後、突然高熱が出ます。さらにのどの痛み、目の充血・目やに、頭痛、吐き気、腹痛、下痢などの症状が出ます。高熱、のどの痛み、目の充血の3症状が特徴的ですが、3つの症状が必ずしも同時に発現するとは限りません。
他にアデノウイルス感染症として、流行性角結膜炎(はやり目)があります。症状は目の充血、目やにがありますが、プール熱と異なり、高熱はなく、のどの痛みもありません。
アデノウイルス感染症の中で、アデノウイルス7型による肺炎には注意が必要です。過去にアデノウイルス7型は米国の軍隊における集団風邪から分離され、「新兵熱」と呼ばれたこともありました。乳幼児がかかると髄膜炎、脳炎、心筋炎などを併発することがあり、重症化もしくは死にいたることもあります。
予防
アデノウイルス感染症はほとんどの場合が軽症で完治する疾患です。しかしながら、乳幼児だったり免疫が低下している者にとっては重症化することがあるため、感染を最小限に抑えることができるよう予防手段をとることは重要だと考えられます。
具体的には石けんによる手洗い、うがいを行い、タオルの共有を避けます。夏場プールのシーズンになるとプール熱が流行するため、プールの前後で十分にシャワーを浴びるまたはプールの後には目や手をしっかり洗うなどをしっかり行う必要があります。
また、家族内に感染している人がいるときは、タオルの共有を避ける、洗面器の共有を避ける、食器の共有を避ける、料理はそれぞれに取り分ける、使った食器は消毒する(熱湯をかけるか、台所用漂白剤に2時間漬け置くなど)などの手段により接触感染を予防する必要があります。
プール熱は学校保健安全法上での学校感染症に指定されています。プール熱は主な症状がなくなっても、2日間は登校しないこととなっています。また、流行性角結膜炎も同様に学校感染症に指定されており、医師により感染の恐れがないと認められるまで登校ができないこととされています。
治療
アデノウイルスに直接的に有効な薬はありませんので、安静と熱やのどの痛みを抑えるなど対症療法が中心となります。高熱には解熱剤を使用し、脱水症状がひどい場合は点滴で対応します。目の充血や目やにがひどい場合は、点眼薬として細菌の2次感染予防のために抗菌剤を使用したり、目の炎症を抑えるために抗炎症薬を使用することがあります。