ミニリンメルトOD錠(一般名:デスモプレシン酢酸塩水和物)
名称の由来
成分の期待効果である「Minimize Urine:尿をできるだけ少なくする」からの造語(MINIRIN:ミニリン)に口腔内崩壊錠の特性(MELT:メルト)を加えて、ミニリン-メルトとなっています。
どんな薬か?
ミニリンメルトOD錠(デスモプレシン酢酸塩水和物)は、夜尿症または中枢性尿崩症の治療薬で、抗利尿ホルモンであるバソプレシン(ADH)の誘導体であるデスモプレシンが主成分の薬剤です。
夜尿症および中枢性尿崩症は、多尿となる病態は共通していて、抗利尿作用のあるADHを投与することで治療が行われます。
幼児期に夜間睡眠中に排尿してしまうことを「おねしょ」ともいいますが、通常小児は成長とともに排尿機構が発達し、5歳頃までには「おねしょ」をしなくなります。しかし、5~6歳以降にも夜間睡眠中の排尿が認められる場合は夜尿症といい、一般的に治療の対象となります。
一方、中枢性尿崩症はADHを産生する下垂体または下垂体を支配する上位中枢が障害され、ADH分泌が低下するために起こるため、ADHの補充が必要となります。
デスモプレシン製剤はすでに発売されていますが、中枢性尿崩症に対してはデスモプレシン点鼻液、夜尿症に対してはデスモプレシン・スプレーが治療に用いられていますが、両剤とも剤形が鼻腔に点鼻して投与する点鼻薬となっています。
デスモプレシンの点鼻製剤の欠点として、鼻からデスモプレシン製剤を吸収させると経口製剤に比べて低ナトリウム血症が起こりやすいことが報告されています。また、夜尿症の対象は幼児であることが多く、点鼻薬がうまく取り扱えないために確実な投薬ができないということが多くあります。
本剤は経口投与製剤となっていて服用しやすく、さらに口腔内崩壊錠となっているので水なしで経口服用が可能となります。デスモプレシン製剤を使用中は低ナトリウム血症を防止するために水分の摂取が制限されるため、水を必要とせずに服薬できるのは意義が大きいといえます。
予想される副作用は?
本剤を使用するにあたって、最も注意しなければならない副作用に低ナトリウム血症があります。水中毒と呼ばれることもあり、過剰な水分が体内に蓄積するために血中のナトリウム濃度が低下した状態になることをいいます。
本剤は抗利尿ホルモンのADH誘導体ですが、ADHは腎集合管のバソプレシンV2受容体を活性化させることで水の再吸収を促進する作用があります。そのため、外に排出されるべき水分が体内に溜まっていくために血液中のナトリウムが薄くなっていきます。
低ナトリウム血症になり、体内に水分が貯留してくると、水分が脳にたまることがあります。脳がむくむと頭痛、吐き気、めまいなどを引き起こし、悪化するとけいれんや昏睡に至ることもあります。
低ナトリウム血症を防ぐためには、水分の取り過ぎに注意することが重要です。本剤を服用する2~3時間前から翌朝までの水分量は、コップ1杯程度にすることが目安となっています。また、寝る前に排尿してから本剤を服薬するのもよいでしょう。
また、本剤の過量投与も低ナトリウム血症を起こす原因となるため、服用を忘れても同時に2回分を服用してはいけません。
その他の注意点
本剤は食事の影響を受けやすくなっています。食後に本剤を服用したのちに血中濃度を測定したところ、空腹時よりも血中濃度が低くなっていました。そのため、本剤を服用する際は食後30分以内の服用を避ける必要があります。
食後服用から食前服用または寝る前に服用時間を変更すると血中濃度が高くなるため、副作用のリスクが上昇するおそれがあります。本剤の服薬時間を変更する際は副作用発現に注意する必要があります。
まとめ
- 本剤は夜尿症、中枢性尿崩症の治療薬である。
- 本剤は、デスモプレシンの経口製剤であり、水なしでも服用できる
- 低ナトリウム血症の発現に注意する。